文化・コミュニティを発信、Pteah Chas 1957がオープン!

CWBカンボジア 奥谷 京子

 昨年12月、プノンペンへ準備のために入って事務所としてオープンさせるために必要なものを買い揃えたりしたのですが、その後入口もガラス扉だったものを全面的に変えて素敵な場所へと生まれ変わりました。今年2月4日にオープンして以来、私も初めて訪れたわけですが、空港からトゥクトゥクで店に向かって通り過ぎるくらいおしゃれになっていました。

 昨年9月にソペアックさんと出会い、このビルを借りることを決めてから、プーンアジの3人生徒(ティー・スレイリャック・若ソペアック)が専門学校・高校を卒業して、その後プノンペンのカレッジでさらにITやデザインのスキルを磨きながらお店を運営して自立していくことになりました。

 しかし彼らは田舎出身の10代の若者で、唯一スレイリャックは実家で売店をやっているのでお商売に接したことがある程度で、ずぶの素人もいいところ。試作をして原価計算をすることなどもやったことがない中でちょうどミャンマーのスーがカンボジアに来てくれたので直接教えてくれて助かりました。

 地域のいいものを仕入れて都会に売ると言っても何がいいのか、そこも遠隔で日本から中原さんが全面的にサポートに入り、また現場ではソペアックさんがブランドづくりや内装、そして入居者のアレンジなども手配をしてくれました。Pteah Chas(プテアチャ)とは古きよき家という意味で、通りを挟んで向かいにあるソペアックさんが最初に始めたビルも1Fが園芸店、2F・3Fはスタートアップのグループ(縫製、野外活動のNGO、下着づくり、デザインなど)が入居し、吹き抜けの階段を上がった3Fには素敵なカフェ、4Fには展覧会ができるスペースもあり、いつも外国人でにぎわっています。そことうまく連携できるような形でこのビルも始まりました。

 1F手前はChnai Market(チュナイ・マーケット)です。ネーミングはいろいろと案を出して最終的にクメール語になりました。Chnaiとは“原石、よいもの”という意味です。ここでいいものを発掘してほしいという現在は半分の壁は地元でコミュニティのために熱心に活動するアーティストの作品が飾られ、さらには環境にやさしい商品を集めたZerow、女性が作っている編みぐるみ、そして我々の活動拠点であるコンポントム州で作られた手工芸品やカシューナッツ商品、さらには赤米などが売られています。

 また現在人気なのはスレイリャックがスーと1月から試作して準備していたベアマフィンとカシューナッツを使ったクッキー。そして先日、日本の大学生がプーンアジ訪問の翌日に来てくれた時にカシューナッツシェイクを提供しましたが、とても美味しい!と喜んでくれました。カシューナッツの産地、生産者だからこそできることが私たちの強みではないかと自信を付けました。

 現在3人が役割分担をしてこのお店番を担っており、LoyverseというPOSレジのシステムを導入しました。これによって日々いくら売り上げたのかを日本からでも毎日チェックすることができています。

 まだお店の中が閑散としており、ほしいと思う商品の選択肢を増やしていかなければいけないのが課題です。そしてカシューナッツシェイクやバターサンドなどがあるということも目立たなかったので、もっとアピールする必要もあります。私にいた数時間でも外国人のお客さんが何組か見に来てくれましたので、英語でもっと会話ができるように努力が必要です。

 まさにお店の運営というのは“働きながら学ぶ”を実践した場所だなと実感します。また、1F奥は4月初旬に若者向けの小説などを多く取り扱う本屋さん“Somnae Store”がオープンし、初日に250人の若者が集まったそうです。

 そして螺旋階段を上がっていくと、2Fは会員制のコワーキングスペースがまもなく始まります。すでにみんなで壁塗りまでは終わっており、あとは什器などを揃えれば始められる状態です。奥には予約制で会議やワークショップができるような場所もあり、仕事を始めたばかりの人たち、またそういう人たちに刺激を受けたい地元の大学生たち、世界を旅しながらホテル以外で仕事ができる場所が欲しい外国人向けにはよいのではないかと思います。

 3Fの手前にある部屋はカンボジアに長らく住んでいるエリックさんという年配のアメリカ人が借りており、ここで週1程度ですが絵画教室を地元のアートを目指す若者向けに開いています。たくさんのイーゼルが立てかけられています。また奥はダイニングスペースにする予定で、2Fのスペース利用者がちょっと休憩でそこでお茶をいれて飲んだり、お湯を沸かしてカップ麺などが作れるような場所を用意しようと準備を進めています。

 さらに屋上はオープンスペースになっていますが、いずれお隣の歯医者さん&大家さんにも協力を要請してエリアを拡大して、ここでクメール舞踊など様々なジャンルのパフォーマンスを披露できる屋外エリアにしていきたいと話しています。この辺りはいわゆる下町で、このビルも1957年に建てられています。日本人にも人気なBKKといった開発地区には20階以上の建物が林立していますが、ここは屋上に出ると邪魔する建物がなくて空が自分のものになった気分になります。ここを使わない手はありません。  街中で始まり、いよいよ田舎と結ぶ実験が始まりました。プノンペンもだいぶ観光客が戻ってきています。この人たちがまた興味をもってコンポントムまで足を運ぶ、その流れを作っていきたいと思います。