コミュニティSDGs とは?いわゆるSDGsとの違い

CWB 松井名津

国連のSDGs(持続可能な開発目標)をご存知ですか?もしかしたら名前をご存じかもしれません。地元の「SDGs活動」に参加している人もいるでしょう。 イベントに参加して、地球に良いことをしていると感じるかもしれませんが、SDGsとは何かをうまく答えることはできません。「これこそがSDGs」をアピールするイベントや活動がたくさんあります。「SDGs」という言葉は聞いたことがあるけれど、具体的には何なのかというとよくわからないという人もいるでしょう。 国連のSDGsには17のゴールと169のターゲットが含まれています。私たちは政府やNPO、NGO、企業などの大きな組織が活動を企画・主導し、そうした企画に参加すればいいと考えがちです。

また国連のSDGsには多くの目標があるため、目標同士が分散したり矛盾したりもします。一つの目標はプラスチックゴミを減らすことですが、他の目標、例えば医療サービスでは医療用器具に多くプラスチックを使用する場合があります。イベントや活動をしている組織は1つの目標に集中し、他の目標は脇に置きがちです。

コミュニティSDGsは国連のSDGsと違って、1)コミュニティに根ざしていて、2)コミュニティを構築する統合的な活動であり、3)民主的な意思決定という特徴があります。

  1. コミュニティに根差している

各参加者だけがコミュニティに属しているという意味ではありません。各コミュニティにはそれぞれの条件や状況があります。それだけにコミュニティにとってSDGsとは何なのかについて話し合う必要があります。おそらく国連のSDGsがこの議論へのヒントになるでしょう。しかし、それは単なる手がかりにすぎません。例えばカンボジアのクイ族のコミュニティのように、伝統的な暮らしを守っているコミュニティもあります。彼らは葉っぱなどを器代わりにしてご飯を提供してくれます。近代化やグローバリズムがクイ族のコミュニティに押し寄せるにつれて、彼らは徐々に竹や木を活用することができなくなりました。生活に根付いた森が他のことにとって代わられ、失われつつあるからです。彼らの中にはプランテーションに代わってしまったゴム会社に勤めてその給料で生活しなければならなくなりました。それでもまだプラスチック製を使わないように努めています。この場合、クイ族にプラスチックを使用しないよう啓発するのは適切でしょうか?それとも未来社会を見据えて伝統文化を復活させるのがいいのでしょうか?現在、CWBでは彼らが外に出稼ぎに行かなくてもいいように地域で自らの仕事を創ること、そして焼き畑農業や現在消滅した製鉄技術の現場をより多くの人に知ってもらうようなツアーも企画しています。クイのケースを考えると、「コミュニティ SDGs」が現在のコミュニティだけでなく、コミュニティの歴史、そして未来についても考えていることに気づくでしょう。「コミュニティSDGs」を一言で言えば、コミュニティを歴史的な視点から捉えて、SDGsを設定したものです。

  • コミュニティを構築する統合された活動

各 CWB には多くの活動があります。 私たちはすでに国連のSDGsに記載されている目標、例えばゴミの管理、固有の民族文化を守ること、地域住民の仕事の創出、教育の機会の提供などを実践しています。違いは、私たちの活動には地域の人々が関わっていることです。私たちの活動は一過性のイベントではないからです。すべては持続可能であり、経済的に自給自足できることを目指しています。多くの若者が私たちの活動、特に仕事においてそれぞれの役割を担っています。彼らはチームとして何をすべきか、自分たちがどのような能力を持っているかを理解していきます。 私たちの活動に実際に参加すると、彼らは自分の能力に気づき、チャンスを得ることができます。若者だけでなく、家族、高齢者も私たちの活動に参加しています。子供と一緒に働いていることもあります。青少年にダンスなどの伝統文化、薬草の知識や知恵を教える人もいます。まさに渦のように、私たちの活動はコミュニティ全体を巻き込んでいます。それはコミュニティを再構築することを意味します。そこが国連のSDGsとの大きな違いです。私が言う「統合」とは、コミュニティを構築・再構築することです。

  • 民主的な意思決定

コミュニティSDGsでは、人々が自分たちにとっての最優先事項を決定します。それは、選挙のように投票するという意味ではありません。

まずは「アイデンティティ」について考えてみたいと思います。人はそれぞれ、母語と同じように、生まれたコミュニティに根ざした「アイデンティティ」を持っています。成長するにつれて自分とは異なる他者に出会うでしょう。その時、初めて自分のアイデンティティに気づきます。というのも別の価値観があることを経験し、自分の価値観とは何かを考えなくてはならなくなるからです。同じ価値観の中でコミュニケーションをとるだけでは、自分のアイデンティティを実現することはできません。価値観の異なる他人だけが、人に自分を気づかせることができるのです。

このアイデンティティは1つではありません。誰かが元のコミュニティとは異なるコミュニティに参加し、コミットする時、その人のアイデンティティは変化します。その人は元の共同体の価値観だけを持った人間ではありません。多くのコミュニティにコミットすると、私たちは複数のアイデンティティを持つことができます。このような複数のアイデンティティは、私たちに多次元の発想・考え方を与えてくれます。複数のアイデンティティを持つ人々は、アイデンティティが1つしかない人よりも、各コミュニティの優先事項についてより良い話し合いを行うことができます。

民主的な意思決定はさまざまな側面での議論を促進することができ、民主的な意思決定を重視します。SDGsについても、さまざまな視点から議論することができます。たとえば、「私たちのコミュニティにとって発展とは何か?」「経済成長は必要?」「なぜ森林を保護しなければならないの?森は私を幸せにしてくれるのか?」などです。これらはごく当たり前な質問です。国連のSDGsに関して、その目標には疑問を呈することはありません。なぜなら、このSDGsは国連で決められ、標準化されたからです。

コミュニティSDGsでは、こうした疑問を投げかけ、お互いに話し合うことができます。この議論では、各人が自分の経験や複数のアイデンティティに基づいてそれぞれ主張します。とはいえ、コミュニティSDGsでは、議論することが最終目標ではありません。 私たちは、コミュニティにとって最善またはより良い方法を考え、実践します。何かをやれば必ず結果は出ます。その結果について議論し、次のステップに進みます。こうした議論と試行錯誤(実践)によって、地域のSDGsは地域ごとに適切で現実的なものとなります。

結局、国連のSDGsとコミュニティのSDGsの違いは何かと言えば、コミュニティSDGsはコミュニティに根ざし、実践と議論とともに、コミュニティをさらに改善していくことなのです。